私も化学物質過敏症です…

胸の痛みや眩暈、不眠などで仕事ができなくなり、色々な病院を探してやっと化学物質過敏症(CS)と診断された時、これで症状は快方に向かって行くのかと思って少し安堵したのを覚えています。1カ月ほど仕事を休んで出社しましたが、原因となったと思われる物質を避けているにも関わらず、すぐにまた出社できなくなってしまいました。

当時は早く良くなりたいと思い、ネットや本から色々な情報を調べ、病院もいくつも廻りました。デトックス、ジョギング、漢方、サプリメント等々いろいろな療法を試してみました。これらの治療法を紹介している人達は、簡単に治るみたいに書いてあるのに、私の容態は改善しませんでした。やがて労災も不支給となり、会社も辞める事となりました。

今思い出しても当時は本当に辛かったです。いつも身の回りの化学物質の事を考えて、それを避ける事ばかり考えていました。治りたくて化学物質過敏症に関する情報を調べたのに、世の中には避けなければならない物ばかり、まるで猛獣の居るジャングルの中の洞窟にひとり取り残されてしまった様な閉塞感を感じていました。

そして、やっと有名な先生に診て頂くことができて、「あなたを治してあげます」と言ってくれたのに、容態は改善せず、後で全然理解してくれていない事が分かりガッカリさせられたり。その繰り返しでした。

避けるべき化学物質の情報はもちろん必要です。でも気持ちが常に外に向いて焦ってイライラしていたのでは良くなりませんよね。

化学物質過敏症の原因は単純ではなく数々の要因が複雑に絡み合って発症していると考えられています。そして、その原因や症状は人によりまちまちです。色々な情報が溢れていますが自分に合った改善方法を見つけるのは至難の業です。

当時「療術」という東洋医学をベースに、西洋医学から民間療法までを統合した施術理論と出会いました。私が今まで学んだことで一番重要な事、当たり前でありながら現代では見落とされている「心と体は一つ」というホリスティックな概念を基に整体や心理療法、オステオパシーを会得して参りました。

正直に言うと私の化学物質過敏症は完全には治っていません。原因になったと考えられる物質は特殊インキでした。これは独特の臭気がする液体のプラスチックの様なものでした。いわゆるプラスチック臭のする車の中やリフォームした部屋は苦手で、そこに長時間居ると未だに耳鳴りや声が掠れて咳が出る事があります。でも、電車に乗ったり、禁煙のレストランで食事をしたり、換気に注意して車の運転をしたり、少し気を付けていれば普段の生活が出来る様になりました。何よりも回復力がついて辛くて寝込む様な事もなくなりました。

『化学物質過敏症と闘って体の中から追い出そう』という考えが徐々に消えて、あの時の症状は、〝危険な化学物質を扱う仕事から心と身体を守る為のメッセージ”だと考えられるようになってきました。以前の状態に完全に戻らなくても『こんな感じでいいかな』という落としどころが見つかったのかもしれません。

誰の体の中にも治癒力は備わっています。あなたの身体は健康になりたがっているのです。その妨げになっているものを少しずつ小さくしていくお手伝いが出来たら幸いです。

 

東日本療術師協会認定 療術師、心理療術師 / 日本ホリスティックケア協会認定 teateセラピスト

田中弘二